続・ポケットに広辞苑を(改訂版)

2002/01/03追記:本ページ執筆後、広辞苑第五版POCKETのCD版が発売されています。これから導入されるかたはこちらを利用することをお勧めします。このページは、POCKET版が発売されていないシステムソフト辞典シリーズの製品を利用したい場合などに参考にしてください。

今は昔の1999年10月、当時CASSIOPEIA E-55ユーザーだった僕は、このマシンでどうしても広辞苑を使いたく、EPWING版の広辞苑をテキスト化したりマクロでいじったりと、いろいろあがいてみました。その時の記録が「窓辺の書斎」の「ポケットに広辞苑を」です。しかし実はその後、検索速度の遅さや漢字が使えない不便さにより、結局この「いんちきポケット広辞苑」は使わなくなってしまいました。

それから約1年。Windows用のハードディスク格納型辞典を多数リリースしているシステムソフトより、2000年6月にWindows CE版「広辞苑第五版POCKET」が発売されました。マシンもE-700にパワーアップし、これで真のポケット広辞苑が実現するぞ! と思いきや……「コンパクトフラッシュでの供給」、「Pocket PC非対応」という2点により、E-700では使うことができません。しかし、長年の夢であるポケット広辞苑、あと一歩まで来ているのにあきらめるなんてできない! ということで、無理矢理動かしてみました。

これが2000年の10月ころの話ですが、その後状況の変化や新情報により、もっと簡単に、安価に「ポケット広辞苑」を実現することができるようになりました。そこで不要な項目を整理し、全面改訂いたしました。

一応、以前のものも残しておきますが、資料として以外の価値はありません。

注意:以下の方法はすべて、中村友次郎が勝手に調べた結果です。これらの方法に関してシステムソフトに問い合わせることは絶対にしないでください!

データの用意――Windows版が使えます!

前述のとおり、「広辞苑第五版POCKET」はコンパクトフラッシュにデータ・プログラムが収録された形で販売されており、定価21,800円とWindows用のCD-ROM版の2倍近いものとなっています。E-700を使っていればコンパクトフラッシュは全くの無駄になりますし、CFスロットのあるマシンでも、すでにもっと大容量のコンパクトフラッシュを利用している人がほとんどなのではないでしょうか。

そこでここでは、POCKET版ではなく、通常のWindows版の「広辞苑第五版」を使うことにします。これのCD-ROMから、「¥DicData¥KOJIEN5F」フォルダ内のファイルをSDメモリカードなどに適当にフォルダを作ってコピーします。ただし、COLSCR.DICという巨大なファイルとMULTI1.DIC、MULTI2.DIC、MULTI3.DIC、MULTI4.DIC、MULTI5.DICはコピーしません。何のファイルかいまいち分かっていませんが、とりあえずWindows CEでデータを表示する場合にはなくても問題ないようです。

ただし、この方法だと、データフォルダの容量が44.9MBになります。POCKET版だと35.1MBです。この約10MBという容量の差に約10,000円の価値を見出せるなら、POCKET版を購入してもよいかもしれません。POCKET版の場合、転送するのは「¥Dic¥Kojien5」フォルダになります。

なお、Pocket PCで辞典データを使いつつ、Windowsマシンでもインストールして使用すると、使用条件に反することになります。仕様許諾書には「同時に1台のコンピュータでのみ使用することができます」とあり、同時でなければ複数のマシンで利用していいのか、それともインストールも不可なのか分かりませんが、システムソフトに電話で問い合わせたところ、やはり1台でのみ利用可能ということでした。

データはインストールしなくてもそのまま取り出すことができます。WindowsマシンとPocket PCで同じ辞典を使いたいのなら、二つ買いましょう(笑)

プログラムの用意――アップデータが使えます

Windows版には当然Windows CE用の検索プログラムは入っていませんし、「広辞苑第五版POCKET」にもPocket PC用のプログラムは入っていません。

そこで、現在の販売元であるロゴヴィスタのダウンロードコーナーで公開されている、「広辞苑第五版POCKET」アップデータを利用します。これはアップデータとなっていますが、実質的にはPocket PC用の検索プログラムそのものです。

なお、Pocket PC 2002/2003の場合は、Pocket PC 2002対応の辞典セットアップユーティリティを使用します。

これを、ドキュメントに従ってインストールします。

レジストリの設定

広辞苑第五版に関するレジストリの設定の例ここまでできたら、とりあえずソフトの起動はできるはずです。ただし、辞典データのありかなどを設定していませんから、起動しても「辞典なし」になってしまい、辞典の選択もできません。

これは本来のインストール作業を行なっていないため、レジストリに辞典が登録されていないためです。というわけで、レジストリのキーの作成、編集を行ないます。Pocket PCにはレジストリエディタが付属していませんから、適当なオンラインソフトなどを利用してください。僕はPHM Registry Editorを使いました。

まず、「HKEY_LOCAL_MACHINE¥Software¥SystemSoft¥SSDictionary¥Dic¥(8桁の任意の数字)」というキーを作成します。検索プログラムは、ここから辞典のデータを拾うようです。

次に、キーの値を作成、設定します。

名前 データの型 内容
DicID DWORD(16進) (キー名と同一の8桁の数字)
SRCINFO 複数文字列 株式会社岩波書店 広辞苑第五版
DicPath 複数文字列 (インデックスファイル名)
DicName 複数文字列 広辞苑第五版

インデックスファイル名には、辞典データを転送したフォルダにある、「%フォルダ名%.IDX」ファイルを指定します。たとえばメモリカードに「DIC」という名前のフォルダを作り、広辞苑第五版のCD-ROMから「¥DicData¥KOJIEN5F」フォルダをコピーしたなら、インデックスファイルは「¥DIC¥KOJIEN5F¥KOJIEN5F.IDX」となっているはずです。

ちなみにSRCINFOは内容をクリップボードにコピーしたときに付加されるタイトル、DicNameはメニューやタイトルバーに表示される辞典名のようです。

ポケットで広辞苑だ!

広辞苑第五版の実行画面これで準備は完了。「プログラム」から「SystemSoft」-「システムソフト電子辞典POCKET」を起動すれば、「広辞苑第五版」を表示できます。

検索方法は前方一致と完全一致があります。後方一致はインデックスの容量の都合で削られたのでしょう。僕が気に入ったのは「ランダム検索」で、ひまつぶしにはもってこいです。

なんだかいろいろポケットに!

日外コンピュータ用語辞典第3版の画面ここでは広辞苑第五版を例に挙げていますが、ほかのものでも利用可能なようです。恐らく、付属の検索ソフトのバージョンが2.0以上のもの(現在市場に出まわっているものすべて?)なら、利用可能なのではないかと思います。豊富なラインナップを持つシステムソフト辞典のシリーズがそのまま使えるというのは、非常に魅力的です!

なお、レジストリの設定ですが、「DicPath」のインデックスファイル指定のみ正確に行なえば、DicIDなどは何でも構わないようです(凡例などを使う場合は関係あるのかもしれませんが)。

僕が試したものと、他の方から「これは動いた」と教えていただいたものを、以下に掲載します。ご参考まで。また、もし「これも動いた」というのがありましたら、ぜひご報告をいただければと思います。ちなみに、ご報告頂いた際、署名などにお持ちのサイトのURLが書いてある場合は名前を載せた上でリンクを張らせて頂いています。URLがない場合は「読者の方より」という形で掲載させていただいています。サイトはあるけど名前は載せないで、あるいはサイトはないけど名前は載せて、という場合はその旨お伝えください。

辞典名 転送するフォルダ インデックス 容量 備考
広辞苑 第五版 図版付き ¥DicData¥KOJIEN5F Kojien5f.idx 44.9MB COLSCR.DICとMULTI*.DICは転送しない
岩波国語辞典第六版 ¥DICDATA¥IK6 IK6.IDX 8.55MB
新明解国語辞典第五版 ¥DICDATA¥SINMEI
¥DICDATA¥YOJI(用字用語辞典)
SINMEI.IDX
YOJI.IDX
12.0MB/4.02MB
ジーニアス英和・和英辞典 ¥DICDATA¥GENIUS GENIUS.IDX 48.0MB PCMDATA.DICは転送しない
日外コンピュータ用語辞典第3版 英和・和英 ¥DICDATA¥NCOMP3
¥DICDATA¥NCOMP3YO(用例)
NCOMP3.IDX
NCOMP3YO.IDX
42.3MB
13.2MB
リーダーズ英和辞典[※] 不明 READERS.IDX 63.7MB WOOZLEさんのご報告による
リーダーズ・プラス 不明 RPLUS.IDX 31.8MB WOOZLEさんのご報告による
図解による法律用語辞典-全訂版 不明 不明 不明 WOOZLEさんのご報告による(体験版で確認とのこと)
マイペディア99 テキスト版 不明 不明 不明 読者のご報告による
漢字源 ¥DICDATA¥IK5 kanjigen.idx 約30MB 読者のご報告による。MULTI*.DICも転送する必要あり
岩波国語辞典第五版 ¥DICDATA¥IK5 IK5.IDX 約10MB 読者のご報告による
リーダース英和辞典第2版+リーダース・プラス ¥DICDATA¥Rdrsppls Rdrsppls.IDX 132.9MB リーダーススペシャルセットのもの。読者のご報告による。
英和コンピューター用語辞典 ¥DICDATA¥Kcompej Kcompej.IDX 12.5MB リーダーススペシャルセットのもの。読者のご報告による。
新和英大辞典第4版 ¥DICDATA¥Sinwaei4 Sinwaei4.IDX 122.4MB 読者のご報告による。
ロイヤル英文法改訂新版 ¥royalegr ROYALEGR.IDX 2.6MB HiDayさんのご報告による。
The American Heritage Dictionary of The English Language,Third Edition with Thesaurus and Idioms ¥AHD
¥AHDTHS(Thesaurus)
¥AHDIDM(Idioms)
AHD.IDX
AHDTHS.IDX
AHDIDM.IDX
約24.3MB
約3.7MB
約2.7MB
HiDayさんのご報告による。
現代用語の基礎知識2001年版 ¥Gen2001 Gen2001.IDX 約10.1MB HiDayさんのご報告による。なお、POCKET版も出ています。
郵便番号辞書Lite ¥YUBINL2K YUBINL2K.IDX 約18.8MB ロゴヴィスタ提供のフリーソフト。HiDayさんのご報告による。
旺文社プチ・ロワイヤル仏和・和仏辞典 不明 不明 約20MB 読者のご報告による。
研究社新英和・和英中辞典 ¥KENCHU KENCHU.IDX 約39.1MB BHINDEX.DIC、BHTITLE.DIC、PCMDATA.DICは転送不要。Naotakeさんのご報告による。
南山堂医学大辞典第18版 ¥DICDATA¥NANMED NANMED.IDX 約13MB(不要ファイル削除後) BHINDEX.DIC(3.18MB)、COLSCR.DIC(18.77MB)、MULTI.DIC(238.66KB)はは削除しても不具合なし。読者のご報告による。
くすりの事典2001 ¥DICDATA¥MD2001 MD2001.IDX 約6MB(不要ファイル削除後) BHINDEX.DIC(844.03KB)、BHTITLE.DIC(1.31MB)、COLSCR.DIC(166.08MB)MUL*.*( 計3.7MBほど)は削除しても不具合なし。読者のご報告による。
プラクティカル医学略語辞典第4版 ¥DICDATA¥PRACMED PRACMED.IDX 約1.4MB(不要ファイル削除後) BHINDEX.DIC(430.00KB)、BKINDEX.DIC(240.37KB)、MENU.DIC(399.90KB)、MUL*.* (計700KBほどは)削除しても不具合なし。読者のご報告による。
岩波日本史辞典 不明 不明 不明 読者のご報告による。
現代用語の基礎知識2002年度版 ¥DICDATA¥GEN2002 Gen2002.idx 不明 読者のご報告による。
※現在販売されている第二版ではありません。ただし、第二版でも恐らく動作するのではないかと思われます。

なお、容量を計測する際には、明らかに使わないであろうと思われるファイル以外はすべて含めています。POCKET版の検索プログラムにはない後方一致検索用のインデックスなどを削れば、さらに少ない容量で済むかもしれません。なお、読者の方より、広辞苑第五版のBHINDEX.DIC(3.82MB)とBKINDEX.DIC(5.92MB)、リーダーズ英和辞典第2版のBHINDEX.DIC(10.35MB)とBHTITLE.DIC(8.85MB)を削除しても問題なく動いたというご報告をいただきました。

また、これらの辞典の中には図版データを持つものもありますが、POCKET版の検索プログラムでは表示できません。

結論

「現代用語の基礎知識2001年版POCKET」、「漢字源POCKET」がCD-ROMとして発売された現在においても、「広辞苑第五版POCKET」と「リーダーズ英和辞典第2版POCKET」は高価な、そしてSDメモリカード機のユーザーにとっては無意味なコンパクトフラッシュ版しか販売されていません。

しかし、アップデータとWindows版の広辞苑第五版、リーダーズ英和辞典と組み合わせることで、合理的な価格で同等の環境を手に入れることが可能です。さらに、そのほかのさまざまな辞書も利用することが可能です。

2002/01/03追記:冒頭にも追記したように、その後、「広辞苑第五版POCKET」と「リーダーズ英和辞典第2版POCKET」についてもCD版が発売されました。

謝辞

Windows版のデータが利用可能であるという情報は、改定前の「続・ポケットに広辞苑を」をご覧になったWOOZLEさんよりいただきました。ありがとうございます。

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