Pocket PCにまつわる戯れ言

コラムなんてご大層なものでは御座いません。

タスクを管理「しない」というスタイル

以下、適当な記憶によるもので、かなり妄想も入っているので話半分で聴くのがよろしゅうございます。

Pocket PCの前身であるPalmsize-PCでは、タスクの明示的な終了を行なわせない、またタスク切り替え機能は提供しない、というのが基本的なシステムデザインでした。ユーザーは利用するソフトが既に起動されているかどうかは気にせず、スタートメニューやハードウェアボタンなどから選ぶと、既に起動していればそちらに切り替わるし、起動していなければ新たに起動するわけです。また逆に使い終わって別のソフトを起動するときも、使い終わったソフトはそのまま放っておいて、メモリが足りなくなったら自動終了、という考え方です。これにより、ユーザーはPCのように「今どのソフトが起動しているか」といったことを気にせず、使いたい機能を選ぶだけという、よりPDAらしい、シンプルな使い勝手を提供することを理想としていました。

しかしPalm-size PCではハードウェアスペック(メモリとCPU)が理想に全く追い付かず、サードパーティ製のタスクマネージャを利用することが当然という状況でした。

Pocket PCの時代になり、ハードウェアスペック的には、複数のソフトを起動していても問題ない程度にはなりました。しかし、今開いているソフトを閉じればその下に確実にあると分かっているソフトを、スタートメニューなどから再度起動するというのも馬鹿らしく、相変わらず「タスクを明示的に終了しない」というスタイルは受け入れられませんでした。

状況に変化があったのはPocket PC 2002です。Pocket PC 2002では、これまでのように頑なに「終了は自動で、別のソフトを使うときは再度ボタンやメニューから呼び出し」に固執せず、「自分で終了させたい派」との折衷案として「クローズボタン」を備えました。これは実際にはタスクの終了を行なうのではなくウィンドウを背面に送るだけのものですが、「Windowsと同様の操作で、使い終わったソフトが目の前から消える」という点においては、十分な使い勝手を提供していると言えるでしょう。

しかし、それでも足りないものがありました。それは、このクローズ機能のハードウェアボタンでの実行です。ハードウェアボタンに機能を簡単に割り当てて利用できるPocket PCにおいては、その終了も割り当てられなければ不完全と言えます。

……以上がPocket PC 2002までの状況だったのですが、今回Axim X3のセットアップ中に設定の「ボタン」を見たら……「OK/閉じる」があるではないですか。素晴らしい。時間はかかりましたが、やっとここまでの環境を作り上げたMSに敬意を表します。一方でハードウェアもCPUが300MHz以上、メモリも64MB以上がほぼ標準となり、複数のタスクを起動していても以前のような大幅なパフォーマンスの低下などは発生しません。Palmsize-PCのリリースから約5年、ようやく理想に実装が追い付いたと言えるのではないでしょうか。

とはいえ現在でも、タスク管理ソフトは人気のあるジャンルの一つで、必須ソフトと言う人も居ます。とくに古参ユーザーだと、2、3個ソフトを起動しただけでPDAとしては使い物にならないくらい重くなったPalmsiz-PC、だいぶ改善したとはいえまだまだ重かった初代Pocket PCの頃のトラウマがあり、使わないソフトを残しておくことに抵抗があるかもしれません。しかし当時とは状況が変わっています。タスク管理くらい標準でできるべきだ、何で未だにできないんだ、という考え方もありますが、逆に技術的には全く難しいものではないのに敢えて未だに対応しない理由というのを考えてみるのも一興かと。当たり前のようにタスク管理ソフトを使う前に、一度タスクを管理しないスタイルを試してみてはいかがでしょうか。意外と、何とかなるかもしれませんよ。

(初出:2004年4月24日の日記

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