- 星の傷痕/Perpetual DayDream
C83じゃなくてC81。誤字ではなく2011年冬コミ作品です。積んじゃってたけどC84でスピンオフが出るのでそれまでには読みたいな……と。というか、今あらためてサークルさんのサイトで確認するまで、C83作品だと勘違いしていました。時間経つの早すぎ……。
さておき。3年半前に前編を読んでから完成を楽しみにしていた作品。10年前のある事故をきっかけに疎遠になっていた幼なじみと、高校で再会して少しずつ距離を縮めていく切なくて甘い学園青春もの……と同時に、時々別人のようになる幼なじみや、どこか不安定な世界の秘密に迫る幻想譚。
話のオチ自体は早い段階読める……というかそもそも、作中の早い段階で割とあからさまに示唆されているのですが、そこに至るまでの過程が丁寧で。主人公の俊輔が結構うじうじ悩むタイプで、かつて傷つけてしまった幼なじみの紫陽花と、仲良くなりたくても「何を今更……」的に引っ込み思案なところを、周りの人々が何度も何度も背中を押してくれるのが微笑ましく。
紫陽花の方も、事故の件で俊輔に引け目があって、その上その後の経緯から10年前の快活な性格が一変して塞ぎ込みがちになっていたりで、その変化を見るのが辛くて俊輔がさらに近寄りがたく……という負のループが痛々しく。個人的なトラウマも刺激されて(苦笑)切なさ大爆発でした。
さておき、友人と、そして紫陽花の兄のおかげで和解してからは、「お互い好き合ってるのは確定だけど明確に告白はしていない」状態が長いのですが……。これがもう。爆発しろ!的なノリで。これまでの時間を埋めるがごとく、でしょうか。幼い頃には普通に入ってた女の子の部屋に高校になってから入って緊張する話とかなかなかリアルで(笑)。だんだん遠慮がなくなっていく紫陽花がまた可愛かったします。
しかしそんな平穏で幸せな日常の中、どこかで感じる違和感と既視感。本作は選択肢が結構多くて、俊輔がその違和感に気付くかどうかで展開が大きく変わる感じ……かな? 「もうひとりの彼女」の真相は悲しく、しかしトゥルーエンドの結末はそれぞれの場所で未来に向っていくという、清々しい読後感でした。喪失を確認して前に進む物語だったのかなあ……とか。良いシスコン・ブラコンゲーでもありました(笑)。主人公は俊輔だけど、「彼女」がこの世界に存在した理由は完全に兄のためだもんなあ。ほんといい兄妹ですわ……。
イラストは女性作家らしい繊細なタッチ。黒髪長髪ややスレンダーな紫陽花さんが、絵的にも触れたら折れてしまいそうで素敵です……! 愁いを帯びた表情がとくにいい。もともとこの絵でジャケ買いした記憶があります。制作期間が長いからでしょうか、後半のスチル(冒頭に掲載したものなど)はとくにクオリティが高く感じました。