「君と彼女と彼女の恋。」についてのメモ(ネタバレ全開)

感想記事とか書くつもりなかったけど頭ん中でぐるぐるしてるのを外部出力して区切りつけるためにメモ。Evernoteにでも書いとけって感じではありますが。前置きとかなしにいきなりガチネタバレいきますよ。あ、「ととの。」だけでなく、「TAIHAism -タイハイズム-」という同人ゲーのネタバレも含まれています。と書くこと自体がある程度ネタバレになっちゃうのだけど、リリースから5年近く経っているので時効とさせてください。

どっち選んだか

悩むまでもなく、キャラクターとしての好き嫌いとも関係なく、サクっとアオイでした。

  • 選ばれなければ存在消失するアオイ(まあ選んでも結局アレなわけですが、選択時点での気持ちとしては)
  • 選ばれなくても人生は続いていき、むしろ心一以外と結ばれないという最初の「ゲームのアップデート」による制約から自由になれる美雪

どちらを選ぶのが主人公的な行動か、という自分のポリシー的なものと照らし合わせたら選択の余地はなかったです。まあ単純に、どんな理由があれああいった行動を起こす美雪なんか怖くてやってられんってのもありますが(笑)。

そもそもあの人、プレイヤーに向かって「所詮は人形の心一なんてどうでもいい、貴方が好き」とか言ってませんでしたっけ。(最終的に心一はその「人形」から脱却しますが。)前代未聞、主人公がプレイヤーに寝取られるゲーム。という与太はさておき、あの辺のやり取り以降、「主人公とくっついて当然の幼なじみヒロイン」という立場から開放してあげるのがむしろこの子のためなのではと思ったりしました。

エンディング後のアレについて

そもそも本作に興味を持ったきっかけは、「主人公が選ぶのは美雪か、それともアオイか……?」という公式サイトの表記と、システムによる演出がヤバいという評判により、もしかしたらタイハイズム同様、不可逆にゲーム自体が変化し、とくに最後は一人を選んだら片方は選べなくなるのでは?と思ったからです。これは自分の目で確かめたい!というわけでプレイした次第。

で、ガチでした。すげえ。「そうは言っても、どうせ最後にはセーブデータ帰ってくるし、何だかんだ理由つけて普通にプレイできるようになるんでしょう……?」とか思ってたらそれもなかったという。

いや、この手法自体は前述の通り初体験ではなかったのですが、何が凄いってこれ、商業ゲーでやっちゃったらクレーム案件になり得るでしょっていう。そこを押し通したメーカーには心から敬意を表します。てか、タイハイズムの感想で「商業作品では絶対にできない仕掛け」とか書いちゃってマジすんませんでした(笑)。

あとは、「再インストールしたりセーブデータ退避したりすれば逆のエンドも見られるかもしれないけど、それは彼女達に対する冒涜だ」的なことを先回りで書いてきたのも、やるなあと。逆にこれは見たい人へのヒントにもなっているあたりは、良いバランス感覚だとは思います。僕は見ませんが。

パッケージの中の紙について

これはもう、パッケージ開けて数字が書かれた紙が挟まっていた時点で、どう使われるかは読めてましたが、それでも実際にそのシーンに来たら純粋にワクワクしました。ご丁寧に使い方解説してくれるカミサマにはちょっと吹きましたが(笑)。

こういうの、DOSゲー時代にも結構ありましたよねえ! 一種のプロテクトとして。エルフのADVでもあったような……DE・JAかなあ。美雪によるゲーム改変後のUIといい、なんだか懐かしい気持ちにになったりもしました。

何というか、テキストアドベンチャーゲームって面白いなあ、というのを再確認した感じ。みたいな。

本作の現実侵食力について

いわゆる「第四の壁」を越えてキャラクターがプレイヤーに語りかけてくる作品自体は今時そこまで珍しくありませんが、それ自体は何だかんだ言ったところで、作品を終えてしまえばそれ以上影響を及ぼす力はありません。

しかしアオイENDで示された、「自分の本質はエロゲヒロインのイデアであり、これから“貴方”がプレイするゲームの中できっとまた会える(超意訳)」という台詞はヤバイ。「ととの。」というゲーム単体を終わらせたところで、エロゲをプレイし続けるかぎりこの台詞の影響は続くわけでです。

もちろん、そうは言っても所詮これはゲームのシナリオで、ライターが喋らせているセリフです。画面のこっちがわの「僕」は、それが現実に何の影響も及ぼさないことを知っています。しかし物語を読むという趣味に傾倒し、かつて空想少年だった「僕ら」は、他のゲームをプレイしているときふと思い出して「もしかしたら」と思ってしまうことまでは止められないでしょう。多分。

これは「ととの。」というゲームとそのキャラクターにとっては救いであるのと同時に、プレイヤーにとってはある意味呪いですらあります。個人的には、一連の美雪のあからさまなプレイヤーに向けたメタ台詞の数々より現実侵食力は高く感じました。不可逆なゲーム改変と合わせて「普通やったらやばいと止めるライン」を超えた、いい意味での「やっちゃった感」があります。

とかなんとか。ところ美雪側のENDは見てませんがどういう流れなんでしょうね。アオイENDはアオイという存在に根付いてるので、それとは多分全然違うものだとは思いますが(平和な日常系?……で済むはずはないか)。個人的にアオイENDはSF・メタフィクションとしての「ととの。」に相応しいENDだと思います。ENDっていうか、終わってないし。

そのほかの演出について

「君と彼女と彼女の恋。」

バックログにネタ仕込んだり、「ゲームのアップデート」時は本当に一度ゲームを終了して再起動したり、テクニカルなメタ演出のデパート、おもちゃ箱みたいで面白かったです。

世界のアップデート時の赤黒い雲と歌(永遠の終わりに)も良かったです。あの光景と「特異点」というワードから「BALDR SKY」を思い出したりもしました。

そんな感じで

これって一種の脱出ゲーだよなーとか思いつつ、メタフィクション好きとして楽しませていただきました。

しかし最初の「ゲームのアップデート」以降、「せかいのしくみ」に興味が向いてしまったので、その後の普通のギャルゲー展開は「どうせこれが茶番なのはわかってるから、はよ次!次!」と焦らされてしまったのも事実。まあ、それは続く展開への布石として必要なのもわかるんですけどねー。

そういう意味では、フルプライスのゲームとしてはややボリューム少なめなのでしょうけど、自分的にはこれでも十分すぎるくらいでした。後半の密度とゲーム体験という意味では、存分に価格以上の内容だったと思います。

まとまらないけど、元々まとめるつもりもないのでおわり。

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