C79戦果メモ その10 「夜鬼夜行」

夜鬼夜行
夜鬼夜行

死者の死に様を疑似体験する能力をもつ少年と、死んだ幼なじみの少女の体に棲み着いている「何か」が、怪異と相対していく様を描いた連作短編。現在2話まで。立ち絵はなく、イメージ的に挿入される写真加工背景と文章で展開するノベルゲーです。アクションもあるけど全体的には文章、演出ともに落ち着いた雰囲気。背景のテイストの影響もあると思いますが、薄暗がりの中を進んでいくような重さが全編に漂っています。

 

“死”にまつわる怪異を扱った伝奇ものの短編としてもなかなか面白いですが、わたくしは何より、主人公と幼なじみ「だったもの」との関係性に心惹かれました。主人公にとっては、かつて好きだった女の子の姿で中は別人(というか人ですらない)。彼女のほうは、主人公を気に入っているような素振りを見せているけど、実際はフェイクでお互い共通の目的のため共闘しているだけに過ぎない。……ということになってるけど、やはりお互いそれだけでは終わらない複雑な思いを垣間見せる場面もあり、歪ながらバランスの取れたコンビという印象です。個人的には、実は彼女は半分くらいは幼なじみそのもので、主人公への思慕を押し殺している……とかいうのを期待しちゃうのですが、さすがにそれは希望的観測すぎるかなあ。

……というのが1話での話。2話ではいきなり主人公不在で、幼なじみの少女と、主人公のクラスの委員長で霊的事象を取り仕切る家の次期当主である少女が、ある事件に相対することに。主人公がその能力(というか強制発動しちゃうのでむしろ呪いのようなもの)ゆえにあまり社交的ではないこともあり、1話はかなり湿っぽい雰囲気ですが、2話は女子2人ということでちょっと華やか、かつアクティブなノリに。また、不在というか出張中?の主人公側では意外にもラノベっぽいコメディも見せてくれます。そして2話ラストの展開・演出にぐっと来てみたり。3話制作中ということで引き続き楽しみです。

そうそう、2話からは主要キャラにボイスがついているのもポイントで、これが結構上手いしキャラに合っているのが素敵でした。クールで皮肉屋の幼なじみと、生真面目で実はちょっとアツい委員長の対比がうまく出てるなあと。あんまり先入観を与えるのもよくないのかもしれないけど、幼なじみ役の人の声は、ちょっと坂本真綾さんに似てるかもと思ったり。

なお、ダウンロード配布では1話と2話のアーカイブが別々に公開されていますが、2話に1話も同梱されているので1話のアーカイブをダウンロードする必要はありません。自分はこれに気付かず、1話だけ版を読んでしまいました。まあ、2話同梱版だと画面下にシナリオ名が入るようになったくらいで、内容は同一のようなのでとくに問題はないのですが。

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