C81戦果メモ10 ツインヒロイン型サスペンスADV「ホワイトノイズ」完全版

“感動”のために殺す殺人者と、復讐のために殺人者となる少女。対峙する2人が主人公のマルチサイトノベルゲーム。サークルさんのサイトでフリー配布もされています。完全版はサントラとサイドストーリーの小冊子つき。本編のバージョンもフリー版の1.50から1.75に上がっていますが、今回が初プレイということもあり変更点は不明です。

さておき、簡単に感想など。最初のリリースからは結構経ってることもあり、あんまりネタバレとかは気にしないかも。でも一応核心的なのは避けてる……かも。

ホワイトノイズ 瑞希 vs 多加子
月明かりをバックに多加子さん。多加子さんは何かをバックに立つシーンが多く、実際様になりますね。……最後のアレも。

主人公の一人は、趣味で殺す殺人者の多加子さん。ありきたりなサイコパス(ってのもアレですが)ではなく理性も良心もあり、それすらも意識的に超越することで“感動”を得るという、快楽殺人を肯定する理論構築(上記はざっくりとした要約で、実際はより詳細です)が凄い。なるほど納得……とはもちろん行かないにしても、フィクションと割り切った上でなら、ある種の筋の通りっぷりに感心しちゃったりもしました。

なので、多加子さん視点でみるとブレずに貫き通した多加子サイドエンドが一番趣深いかなあ。と、思ったけど逆のエンドもある意味極まってて悪くない。てか、これどっちも結局、場を支配してるのって多加子さんですよね……。

というわけで、もう一人の主人公の瑞希。こっちはちょっと掴みにくい。殺されても生き返る(理由は謎)、生き返る度に歪んでいく?(詳細不明、理由は謎)。最後の方に一瞬考察めいたものもありますが、基本的には「そういうもの」という舞台装置として受け入れる類のもので。SFではないのでそこは軽く流すとして、多加子さんとは逆に、理由無き狂気へと染まっていく様を楽しむ系でした。最初は復讐のための行動にある種の共感を覚えつつも、だんだん手段が目的化して何かがズレていくのが面白く。友達のことを「最悪、盾として使えばいい」とか言い出したあたりからオイオイどうした、みたいな(笑)。

ちょっと気になったのは、多加子さんの過去話。そういうわかりやすいトラウマが殺人肯定理論の底にあるとしたら意外と普通(ってのもアレですが)で、多加子さんさんはそういうのは超越してて欲しいというか。瑞希の蘇り設定と同じく「そういうものだからそういうものなのだ」で良かった気はします。でもこの辺のエピソードが一応、「あの人を殺せない」エンドへの伏線になってるのかなあ。愛か?結局愛なのか?まあこの辺は結論出ずぐるぐる回ってるのがそれはそれで面白くはあります。

そしてトゥルーシナリオ。「「許せない!」」アツいです。何だかんだ言ってこの、殺し合う間柄だからこその理解・信頼という展開には一般倫理を超越したところでぐっと来るものがありました。

システム面では、2人の対決シーンにおいて、マルチサイトを活かしてそれぞれの行動を制御することで、どっちかを勝たせたり引き分けに持ち込んで話を進めたりするのがユニーク。本文は一人称視点でありながら神視点で場を動かすというのが面白かったです。

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