- fault milestone one(ディレクターズカット版)/ALICE IN DISSONANCE
- 【週末ゲーム】第530回:同人ゲーム体験版特集 2013夏 – 窓の杜(体験版の紹介記事)
- C83戦果感想メモ5 アドベンチャーノベル「fault -milestone one-」体験版 Version 0.1(j)(初期体験版の感想)
連作ノベルゲームの第1話。1年くらい前に読んだのですが、その後演出等強化のディレクターズカット版がリリース。今回milestone twoの体験版が出たのでそっち読む前にあらためてディレクターズカット版で読み直しました。というわけで、(1年前忙しくて日記にまとめそびれてた分も含め)感想など。
核心的なネタバレは避けるつもりですがどうなることやら。毎度のことですが書き始める時点で何書くか全然考えていません(というか、考えを纏めるために書いているようなものでして……)。
マナにより発展した架空世界を歴史から社会情勢まで作り込んでる感
地水火風のマナを操作してさまざまな現象を起こす「マナクラフト」という技術が発達した世界のお話。milestone oneでは、主人公達(セルフィーネ姫と、そのガーディアンのリトナ)がマナクラフト文明が栄えた国から、トラブルで世界の裏側、マナが希薄な「アウターポール」と呼ばれる地へ転移してしまう……という導入で、「マナクラフトがまともに使えず、代わりに科学が発達した社会」との対比という形でマナクラフトを中心とした世界観を紹介するという面もある第1話でした。
で、初期体験版の感想にも書いたのですが、この世界観の構築がロジカルかつ丁寧で、物語のために一つの架空世界をしっかり作り込んでいるように感じられるのが、個人的にまずぐっと来た所です。マナクラフトにより産業革命的なものがまず起きて、今は通信革命の最中……といった社会情勢があり(この辺は若干想像も入ってますけど)、またこれによって主人公達の住んでいた大陸がどう纏まっていったかという歴史があり。
もちろんこういう話は設定マニア的にだらーっと開陳されるのではなく、物語やキャラクターと合わせてじわっと染みてくる感じです(戦闘用クラフトまわりは若干説明臭さはあるかも。好きですけど)。マナクラフトの発達によって男女の戦闘能力差がなくなり、男尊女卑社会から脱却ってあたりも凄く納得感がありました。
主人公の一人であるリトナ女史(地の文の視点人物であることが多いし、個人的にはこの人がメインの主人公(って何だ)というイメージ)が、口調なども含めナチュラルに中性的(この傾向はmilestone twoでさらに顕著になったと思いました)で、クール系少年漫画主人公の趣があるのですが、その辺も上記と照らし合わせるとこの世界ではそれほど珍しくないんだろうなとか。実際milestone twoで出てくるフローラさんもそんな感じですし。
後は重要な設定として、王族のみ使える先代から知識や経験を受け継ぐ「パスダウン」という記憶転移のクラフトがありますが、ここまで近代化が進んだ社会で王制が続く合理的な理由にもなっていてこれまた納得感に繋がっていました。そんでもってアウターポール側では株式会社とかできてるのがまた対照的だったり。
おとぎ話的な意味でのファンタジーというより、中世からの世界の発展に「マナ」という異分子を混ぜた場合をシミュレートした思考実験……とまで言うと個人的な思い入れを詰めすぎかもしれませんが(汗)。敢えて分類するならハイ・ファンタジーですが蒸気をマナに置き換えたスチームパンク(クラフトパンク?)とも言えるかもしれません。実際科学側ではかなりSF的なガジェットも登場します。
科学の代わりに魔術が発達した(魔術の存在のため科学側を発達させる理由がなかった)世界を描いた話というのは割とありますけど、faultの場合アウターポールの存在により、科学も並行で発達してるのも面白いんですよね。
まあ色々書きましたが……ぶっちゃけRPG好きとしてめっちゃ燃える世界観なんですよ!(ぶっちゃけた)。マナクラフトの仕様および行使工程がかなり明確で、milestone oneの最後で世界へと旅立つ3人の戦力バランスもなかなか良いので、戦闘システムに落とし込みてぇ~って思っちゃいます(笑)。
意識の連続性とか記憶とアイデンティティとかその辺のあれ(大好物)
「fault」シリーズとしては祖国への旅路を主軸としつつ、毎回行く先々で、その地域ごとの事件に巻き込まれたり、(主に姫様が)首を突っ込んだりしてく流れかな、と思いますが、初回となるmilestone oneで扱われたテーマが、個人的に色々あって物語のテーマとして長年好んでいるものだったのも、ハマった理由です。
初期体験版の時点では紀行ものっぽさが前面に出ていたこともあり、milestone oneはシリーズ全体の中ではプロローグのようなものだし主人公側の事情中心かな?と思ったらとんでもなかった。むしろ「faultってこういう感じで結構ダークファンタジーっぽく行きますんでよろしく」という直球投げてきた感じで。
んーこれネタバレ抜きでどこまで言えるか難しいな。ぼかしてみますが多少漏れるかもしれませんがご勘弁を。
記憶を受け継いだ存在が本人か別人かってのは好きなテーマで、我々の世界の常識では客観的にはまあ別人なんだけど、fault世界観だとそこは「メモリーマナ」というものが何物かという点にかかってくるのかなと。純粋に情報ストレージ的なものであれば結論は変わらないけど、肉体と魂の分離が可能なのだとしたら……?
ただどちらにせよ、主観的存在としての「彼女」の涙は本物だし、かといってかつての「彼女」が最後まで救われなかったことも厳然たる事実であり……この辺はもうひたすら切ない。「父」はメモリーマナというものをどこまで理解していたのか、「兄」は今どこまで理解し、「彼女」をどういう存在だと思っているのか……これからその辺もわかっていけるといいなぁと思います。人と物語を読み解くために、世界を知りたい。
それはそれとして、理屈はともかく、「彼女」が欠落していたものを補われた結果、かつての「記憶」に別の意味を見出していったのは純粋に胸が熱かったですね……。本人か別人かはともかく、「父」はこの可能性を見出して、実現させたかったんだろうなと思います。
あとはかつての「彼女」が抱えていた外の世界への憧れ(本人がそう認識できていたかはともかく)を「彼女」が叶えるってのも本当に熱い展開で……。アウターポール生まれの人間は体質的にアウターポールから出られない、という設定がかなり重いのですが(アルバスさん……)、それだけに「彼女」には色々なものを見て欲しいなぁと素直に思います。
で、この辺の「自分であることを定義するのは何か」的な話はmilestone oneラストからmilestone two冒頭の例のシーンにもかかってくるわけですね。多重人格ではなくあくまで性質が移った本人かー。となるとやっぱり基本的には情報ストレージなのかな。まああっちとこっちは似たような系統というだけで同じ技術とは限らないですが。
ディレクターズカット版でさらに磨きがかかったグラフィック
ディレクターズカット版では冒頭の戦闘シーンの演出強化などもいい感じでしたが、やはり新規CGが素晴らしかったですね。最初におおっと思ったのはやはりリトナさんの硝子の剣のシーン。これ本当は直前からの流れも含めた演出自体が良いので、こっちだけ見てもあれではあるんですけど。
あとは絶対ネタバレで載せられないけど最後の左右2分割……あれも演出込みで凄く良かったですね……。
おまけ:milestone twoちょうやばい
そんなわけで、milestone oneがとても面白かったのでmilestone two体験版もプレイしてみたのですが、milestone oneから続く冒頭の戦闘シーンのある演出、これはやばい、ちょうやばい!! いや、これが全く初めてというほどではないし、というか最近もある作品が話題になったりもしたのですが(ネタバレになるので絶対タイトル出せないけど)、あ、faultってこういうのもアリな作品なんだ!ってことでシリーズ全体への期待度がさらに上がりました。「ゲームでしかできない物語演出」はノベルゲームをプレイする醍醐味の一つですね。
(ノベルゲームの演出とか興味ある人はこれだけのためだけにでもmilestone two体験版やって欲しいのですけど、milestone oneのラストシーンから直接繋がる続編なのが悩ましい……。まあmilestone one自体も3時間くらいで読めるので興味がありましたら。)
でも顔アップはマジでこわいからやめて!てかこっちみんな!(笑)
追記:milestone two 上の感想も書きました。
2件のコメント