iアプリゲーム感想メモ ファンタジーアドベンチャーゲーム「クリフ深淵録」

「シルフェイド」シリーズや「WOLF RPGエディター」で知られるSmokingWOLFさんのモバイル専用作品。モバイルといっても、今をときめくスマートフォンではございません。トラディショナル携帯電話(略してトラケー)向けのiアプリでございます。シルバーセカンドモバイルという月額サービスに入会するとプレイ可能。私は約4年前に発売されたHT-02A以降、完全にスマートフォンに移行してしまっていたので、本作プレイのためにP-03Dという端末を買ってみたり。なるべく画面が大きくて折りたたみではなく、シルバーセカンドモバイル動作対象機種という基準で選びました。

さて、このクリフ深淵録という作品。原作は「クリフ迷宮録」というRPGで、WOLF RPGエディターのデモとして作られた10分ほどの内容。物語は途中(というか冒頭のみ)で終わっています。この途中で終わっている話を、アドベンチャー(ノベル)ゲームと形を変えて、最後まで綴ったのがクリフ深淵録ということになるのかな。

なお、原作となったクリフ迷宮録という作品、冒頭の「箱を開けたら女の子が出てくる」という展開が絵面的なおかしみと共にいい掴みになっており、これが深淵録でも再現されているのかな、というのがプレイするにあたり最大の関心事でした。とはいえ、そのシーンに至るまでの展開が割とシリアス目だったので、流石にないかなーと思いましたが、

クリフ深淵録 箱の中のセシュばっちり再現されておりました……!! 可愛いけどアホっぽい絵面だ(笑)。

とはいえ、全体的には結構シリアスで重め。主人公のクリフは神官騎士という立場ですが、人々を救う現実的な手段として騎士という力を振るっているという趣で、必ずしも清廉潔白な人物、というわけではありません。陰謀により島流しとなり、迷宮の探索をすることになったクリフは、何よりも生き残ることを最優先にするし、そのためにははこすい手も使う。ただ、その泥臭いところが、生の人物としての存在感を感じさせて好印象でした。それでいて「人を救うために」という根本がブレてないところが格好良かったりも。ヒロインのセシュも、守られ系かと思ったのは最初の一瞬だけ。したたかに成長していく様が凛々しゅうございます。

クリフ深淵録 クリフ vs 死霊騎士
未知の敵を分析しながら戦うクリフ

迷宮の探索も、いかにもRPG的にどんどん進んで……という感じではなく、まず準備。1日目は様子見。敵と出会ったら無理せず撤退……と、乏しい物資のなかでの探索ぶりがリアリティをもって語られ、冒険活劇というよりもドキュメンタリーの趣。RPGなら迷宮内の1戦闘シーンで終わってしまいそうな戦いも、撤退戦、体勢立て直しなど戦略級の話になり、実際の相対でも例えば骸骨の戦士が相手なら、骨というものは存外に硬いものであるという話や、骨だけで動くような特異な存在がどうすれば動かなくなるか?に主眼を置いた戦い方など、手に汗握りつつもロジカルなのが楽しかったです。

あと世界観も、もともとシルフェイドの世界はいわゆるJRPG的なノリからはちょっと本格寄りで、「理力」や「意志の力」など独特なファンタジー体系を確立していますが、本作ではさらにハイ・ファンタジーらしいというか、魔法などは「おとぎ話や伝承には出てくるけど、現実には存在が信じられていない力」という扱い。上述の骸骨戦士なんかも、「あり得ざる者」としての存在感を醸し出しています。ぶっちゃけ、渋い! 一方で、本編では直接は語られないものの、シルフェイド世界における重要な存在が実は関わっていたことがクリア後のオマケでわかり、シリーズのファンとしてはニヤリとする部分もありました。

極めつけは迷宮深奥の展開かな。そこで「何」が待つかは予想通りでしたが、それに対しクリフがどうするか、は予想外でした。ビターだ……ほんと苦いわ……。ただ、最後の最後に救いはあった、のかな。クリア後のオマケで、続編や、他作品での出演の可能性にも示唆されていましたが、せっかくの魅力的なキャラクター達なのでまた違った形での活躍を見たいですねえ。ところでキャラといえば、本土で兄クリフの行方を捜す妹さんが可愛いのですが、彼女の「理解し合う」は完全に天然なのか、それともわかっててすっとぼけてるのかが気になります。

なお、ちょっと気になったのは三人称と一人称の混在。場面が変わって切り替わる……とかではなく、「クリフは~」からシームレスに「私は~」に切り替わったり。また視点人物の切り替えもまれにシームレスで、さらにクリフもセシュも一人称が「私」なので一瞬(本当に一瞬ですが)戸惑うこともありました(洞窟に避難するあたり)。

あとはやっぱり……惜しいのはプラットフォームですねえ。ノベルゲーでバックログが無いのは結構辛い(うっかり読み飛ばしてしまったら、一度タイトルに戻って節メニューから再開して当該箇所までスキップ……とか)ですが、制限の多いiアプリではなくスマートフォンならバックログくらいはつけられたのかなあとか。

プレイできる人がどうしても限られてきちゃうのも寂しいですね。私自身はついカッとなって端末ごと買ってしまったわけですが。本作の開発は2010年9月からとのことで、その頃はまだiモード公式系などの従来型のコンテンツの受け皿がスマートフォンにはほとんどありませんでしたが、今ならiメニューとかもあるので、より多くの人の手に渡る機会ができればなあ、と思ったりします。

最後に余談ですが、トラケーというのは僕が勝手に作った呼び方なのでご注意ください。

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