C85作品感想メモ2 SFストーリーを紡ぐゲームとしての「アスタブリード」に関する雑感

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発表当時から楽しみにしていた作品が、今冬ついに完成。コンティニューしまくりですが、何とかNORMALでクリアできました。シールド回復制ということもあり、自分のような動的ゲー下手の横好きでも爽快感のあるプレイを楽しみつつ、終盤のボス戦では数多くある攻撃手段をうまく使い分ける大切さを実感し、操作に習熟するたびに戦術の幅が広がっていくのが本当に面白く。とくに勉強になったのがラスボス戦で3時間くらいかかりましたが(汗)、そこからの2周目がまた格別でした。EASYはブレードで消せる弾が多いので、ロックオン→敵弾切りでEXゲージ溜め→乱舞!の流れがめっちゃ熱いですなー!

さておき。アクションシューティングとしての魅力は上記、窓の杜の記事でゲームライターの石田さんに存分に語っていただいたので、こっちではSFゲー、そして物語を紡ぐゲームとして好きなところを徒然なるままに書こうと思います。あ、結構ネタバレすると思いますのでご注意ください。

ゲーム進行と一体になってシームレスに語られるストーリー(……と思ったら!)

本作のストーリーは基本的にゲーム進行と一体になって、フルボイスの台詞で語られる方式。お調子者っぽいけど気遣いや熱血漢らしい面も垣間見えるロイとクールなフィオの軽妙な掛け合い(「俺たち、パートナーだろ!」「そうなりたいなら努力する事ね。」「え、違うんだ……」)、敵となってしまったフィオの姉エストとの、刃と銃火を交えながらの魂のぶつかり合い(「エストォォオオッ!!」「馴れ馴れしいぞ、お前ぇぇえええッ!!」)などが展開されます。

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4面のエストの語りも凄く好き。「“絶対に負けられない戦い”を、何度も、何度も負けつづけたのよ」という台詞からひしひしと伝わってくる絶望感……! 要所要所で顔を出すダニエル提督も美味しいキャラですね。「(前略)したらパワーアップした」「うむ、理解した」のやり取りはお気に入りです。

各キャラ声優の皆さんの熱演も魅力。フィオとエストは双子ということで一人二役ですが、クールなフィオと、感情がある意味振り切れているエストの演じ分けも素晴らしかったです。フィオはちょっと取り乱した時の演技も素敵。ロイは主人公らしい真っ直ぐさが良く出ているし、ダニエルさんは威厳と愛嬌が同居したキャラをきっちり演じ切られていたと思います。

結構忙しいプレイ中でもこれらの台詞がプレイを阻害している感はなく、むしろ相乗効果で盛り上がっていました。C83版の感想とかぶりますが、字幕とボイスのハイブリッドにより内容が把握しやすいこと、一つ一つの会話の間の取り方が適切であること、ボイスが明瞭で聞きやすいことが理由かな。強いて言えば、SEのボリュームがデフォルトだと大きくて、乱戦だとやや聞き取りにくいときがありました。(個人的にはボリューム設定はボイス100%:BGM70%:SE50%くらいがお勧めです。)

また、場面転換の際には敵が出てこないで進行するシーンもそこそこあるのですが、そこで「待たされてる」感は全くありませんでした。再プレイしながら何でだろうなー、と改めて考えていたのですが、これは「その間、シールドが自動回復するから」であると思い至ったり。意図した効果かは分かりませんが、このお陰で何度プレイしても場面転換が待ち時間ではなく、むしろゲームプレイ上もメリットを感じられるものになっていました。プレイヤー的にも、機体的にも貴重な小休止なんですよねえ。破壊されかけの時はむしろ「もっと長引いてくれ」って思います(笑)。

「Chapter」として表現されるステージのクリア時も、リザルト表示と並行してストーリーが展開、その流れで次の舞台へと移行するタイプ。全体を通してシームレスに、アクションシューティングとストーリーが一体となって進むテンポのよい作品です。

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……と思っていた時期が私にもありました。いやー、5面前のシナリオパート。これはびっくりしました。でも、ここまでハイテンポで突っ走ってきて、それが機体的にも、ロイの心情的にも躓いて、このタイミングで、というのが絶妙です。シューティングゲーム的にはかなり冒険だと思うのですが、でも入れるならここだろうし、今となってはこれ無しの展開は考えられないし。思いっきり手のひら返しますが(汗)ここで一度立ち止まるからこそ、終盤の盛り上がりっぷりが一層際立ったと思います。純粋にシーンとしても大好きというか、2周目でもまだ涙ぐんじゃうんですけどここ。

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まあ、SFシューティングのお約束である機体乗り換え(厳密には強化)イベントなので、機体動かしながらはできないっていうメタ要因もあるとは思いますが。

語りすぎない本編と、存分に設定補完されるクリア後データベース

30分くらいのゲームプレイの中に、プロット的にはこれ2時間映画1本いけるんじゃね?というくらいの物語とSFマインドが詰まっている作品。でもやっぱりゲームだからこそ、プレイヤーがロイ達と一体になって切り開くからこそ熱いんですよねえ。

という話はさておき、ロイ達の主観視点(ゲームシステムではなく物語的な意味の方)で台詞メインということもあり、物語やキャラクターの背景に関しては、ゲーム中では最低限しか触れられません。前提となる地球圏とファイルーンの戦争について、マニュアルくらいには何か書いてあるかなーと思ったら無くてびっくりしました。

公式サイトのゲーム紹介ページにはあるんですけど、マニュアル等にないってことは、必ずしも知らなくてもいい情報ってことになるけど、大丈夫かしらん……?と思いつつプレイしましたが、結論としては杞憂。戦争はあくまでバックグラウンドで、これは家族の物語だったんだなぁ……というのが自分の解釈です。1周目でも、いくつかわからない設定などはありましたが、本筋のストーリーは存分に堪能することができました。

その上で、クリア後に開放される設定資料で細かい設定を把握してから再プレイすると、より一層楽しめますね。S.D.F.がどういう位置付けだったのかとか、ファイルーンの称号とか「へぇ~」って感じでした。あと、1面2面ボスに使われていた人類ってのが誰かわかって「なん……だと……」となりましたが、これはロイが癖を理解している、って時点で気付くべきでしたねぇ……精進が足りない。「人類兵士らしい戦い方であることに気付いた」程度の意味だと思っていました。

気付かなかったと言えば、わたくし、アーセントートが機体名だと1周目クリアまで気付いていませんでした(汗)。3面でエストが最初にこの言葉を口にするとき、字幕の方では「まるで漸近線」と言うので、最後の「さよなら、私のアーセントート……」も乙女ポエム的な意味かと(笑)。2周目プレイしたら4面でも一瞬「これがアーセントート」ってフィオの台詞がありましたが、このあたりはがむしゃらだったので聞き流してた模様。まあでも、エストの台詞はダブルミーニングと捉えてもなかなか乙ですよね。

また、2周目はちょっと余裕があったので、字幕表示横のフェイスウィンドウもなるべく見てましたが、本当に表情豊かで。何周しても、アクションシューティングとしてはもちろん、ストーリー、演出面でも新たな発見がある素敵なゲームです。

エンディング後について

この辺から本格的ガチネタバレ行きますのでご注意ください。

実際に続編構想があるかどうかはさておき、結構先の物語に思いを馳せたくなる、余韻のあるいいエンディングだったと思います。双子達はどういう存在になっていくのか。ロイはどうするのか。火星も気になるところですが、人間相手に戦争やるロイはあまり想像つかないかも。でもそう温いこと言っていられる時代じゃないだろうし……。

それはさておき、ダニエルさんグラサン外すとイケメンすぎです(笑)。余談ですがダニエルさん、同サークル過去作品の「エーテルヴェイパー」にも同じ名前で似た姿の人が居ましたが、スターシステム的な感じなのかな。ファイナルファンタジーにおけるシドみたいな?(話的に繋がりはないはず……そもそも名字が違いますね。)

ファイルーンも気になるところです。個性を得たことで論理ループに陥っているディアグラですが、あれ、でもその知性体としての揺らぎって、まさにルーキスを生み出すために必要なものなのでは?とか。オリジナルルーキス vs 量産型ルーキスとか妄想が膨らみます。あくまで二次創作的な勝手解釈ですけどね。

あくまで勝手妄想ですが、と再度念押しした上で、STGで続編とかあり得るなら、パートナーにフィオかエストを選んで機体性能が変化するとかだとめっちゃ燃えそうです。

「現実改竄装置」ルーキスとは何だったのか

「火器としての利用は一側面でしかない」ルーキスですが、設定資料を読むと本編での使われ方もまだまだ序の口、完成形は理論上「過去から未来まで宇宙の全てで起こる事象を書き換えることができる」と来たもんだ。途方もない話ですが、実は我々プレイヤーはそれに近い事象を既に経験しています。……そう、コンティニューです。本作はコンティニュー回数に制限はないので、プレイヤーが諦めてゲームを止める以外に、「失敗するという結末」はありません。

もちろん、ゲームシステム上のことと捉えるのが普通なのですが、これを「遥か未来、完成形ルーキスとなった何者かが(敢えて誰とは明確に想定せず)、失敗の未来を書き換えてやり直しのチャンスを与えている」と解釈するとちょっと楽しいなあとか。そう考えると、キャッチコピーにある「未来を書き換えろ」も意味深な……とかなんとか。繰り返しますが妄想ですよ!

とはいえ、あくまで巻き戻すだけで、状況を打開するのはロイ達自身でないといけない。これは技術的な制限なのか、あるいはポリシーか……。その後に待ち受ける運命に備えてロイに強くなってもらわなくてはならないからでは、とか想像してみたり。

以下余談。本作はC83体験版のあとにゲームシステムが大きく変わっていますが、そこまでは「さまざまな攻撃形態をもつ設置・独立操作型のオプション」として万能兵器ルーキスの存在感が大きく、これがシステム、設定両方にまたがるポイントだと思ってたので、完成版で万能感の演出はやや薄れたかなあという気はしています。シナリオ的には大活躍ですけどね。

フィオかわいいよフィオ

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体験版の頃からずっと可愛いなあと思っていたのですが、本編そしてエンディングを経てさらに惚れました。エストも可愛いですけどね。

で、設定資料の「地はマイペースでおっとりした性格だが、大人の信頼を得るためクールで尊大な素振りをしている」という設定を知って思いっきり身悶えました。いじらしすぎるだろ、お前ぇぇえええッ!! これを知った瞬間以下の妄想が0.5秒で展開されました。

  • フィオ達の姿は空間投影映像
  • 彼女らの姿は心理状態が反映される(逆に言えば望むイメージを投影できる、はず)
  • 覚醒した彼女らはイメージを物理的に具現化できる
  • その力は徐々に強まっている
  • →17歳フィオ「ねえロイ、私触れるようになったんだよ……」

いやまあ、今のところあくまでロイとは家族、兄妹って感じですが、今後どうなるかは分からないじゃん? 何しろ奴ら、一瞬でデータベースにアクセスできるから究極の耳年増だぞ!

……すみません取り乱しました。まあでもやっぱりフィオさんはクールなのがいいですね。チュートリアル、本来ならやや冗長になりかねない内容でも、フィオさんが命令口調でしゃべってくれるので大変ご褒美です。

あとは、自分があのまま生身の人間として成長してたらとかイメージして、1年ごとに投影像をリファインしてるフィオさんとか妄想して身悶えたりもします。え、もういいですか?はい、次いきます。

クロスブリードとアスタブリードというネーミングについて

アスタブリード(Astebreed)はaster-breedで「星の子」くらいの意味ですかねえ。クロスブリードは異星文明の技術でできてるから未知の「X」にbreedかな、と思っていたのですが、クリア後に設定資料みて地球、ファイルーンの技術を合わせたcrossbreed(異種交配)からか!とか思いました。多分ですが……。

と思ったら公式サイトに「異星と地球の技術が融合された宿命の機体」って書いてあって答え出てましたわ。宿命の機体!かっけー!!

追記:本記事をご覧いただいたサークルの中の人より、ネーミングに込められた意味の補足をいただきました。有り難うございます。

 

ちゅ、中二マインドに感動した……!

さておき、ということは最初にタイトル決まったときから「2人が3人になる」のは決まってたのですね……推測ですが。コミティア99版の時点では設定とかも結構違ってたけど、ストーリーの基本コンセプトは定まっていたのかなぁとか、ちょっと感慨深かったり。

プロローグについて

ここまで述べる機会がなくて書きそびれてましたが、プロローグめっちゃいいです。SF映画っぽいなぁという印象を特に感じたのはここからでした。暗雲立ちこめる絶望的な状況から希望を拾い出して、そこから繋がる本編が青空でスタートってのも素敵です。ゲーム初回起動時にいきなりプロローグから始まるのも良い演出ですね。

グラートさんがまたねぇ……。隊長としての渋みに、子を想う親としての思いが、迫真の演技もあってひしひしと。5面前での再登場は驚きましたが、ロイにとってもいい親代わり、師匠だったんだなぁというのが伝わってきました。まああれは、本人(?)も言うとおりぶっちゃければロイの妄想なんですけど。

あー、でもあそこまで鮮明に会話ができるのって、ただの妄想と片付けるのもちょっと惜しい感。これまた未来の誰かがルーキスで……というのはまあ、考えすぎですね、ハイ。

BGMについて

どれも格好いいですが、体験版の頃からよく聴いていた1面曲「Headwinds」、1~2面ボス曲「Energy diffuse」あたりは特に思い入れが深いです。Headwindsは海上クルーズっぽい、いかにもSTGの1面らしい曲。Energy diffuseはアタックの効いたイントロからいったん抑えて、サビ前でイントロのアレンジが来て、そこからメロディアスで格好いいサビに繋がるのがめっちゃいいです。

完成版ではラスボス曲「Armageddon」も聴きまくったので印象に残っていますねえ。中盤からの盛り上がり~サビの展開がボス戦自体の熱さと相まってアドレナリン出まくります。プロローグのBGM「Tear the Filunes」も、まさに序曲という感じで良かったです。

パッケージ版付属のサントラを聴き始めたところですが、ゲーム用の調整として押さえられていたのであろう高音部がシャープに、ドラムスなどの低音部がドンと響く感じでこっちも素敵。「Energy diffuse」のイントロとかだいぶ印象が違いますねえ。

C83体験版からの3面ストーリーの変更について

過ぎたことを引き合いに出すのも野暮かもしれませんが、個人的に「おおっ」と思った所なので軽く。

C83体験版の3面では人類同士が戦う展開となっていましたが、完成版では過去にあった戦いをルーキスで再現という形に。C83版の展開も宇宙戦争SFとしてはだいぶ熱いのですが、ここでロイは、そしてエストも、味方殺しの十字架を背負うことになるんですよね……。そこを重く描いて掘り下げる作品ではない、ということでの変更かなと解釈しています。

でも、あの戦い自体は本当にあったことなんですよね……。エンディングでセラフさんの名前を見たときは静かな感慨がありました。完成版では名前と設定資料だけの登場でしたが、自身の立場で成すべき事を成したセラフさんに思いを馳せてみたり。体験版でのやり取りは、ある意味過去編として貴重だなあと思ったり。(知らないと本編理解に差し障るようなものでは全くありませんが。)

アクションシューティングとしてのアスタブリードについても

前述のとおりアクションシューティングとしてのアスタブリードについては、石田さんがだいたい言いたいことを言ってくれたのですが……強いて言えば、動的ゲー下手の横好き視点でいくつか。冒頭とややかぶりますが。

  •  割とアバウトなプレイで進めちゃう本作ですが、最初に大きな壁を感じたのは……ラスボスでした(笑)。そこまで適当やってきたツケがここで! ラスボス戦ではショット系とブレードを同時並行操作することと、弾避けの大切さ(今更!)を教わりました。
  • 防御としてのブレード、超大事。
  • 弾避けについては、「避けなくてもいい弾を見極める」のも大事かなあと。赤いでっかいのとかに当たるとめっちゃ痛いので、そこを避けるためには黄色に突っ込むことも辞さない。

  • EXアタックについては、1つの敵を全部ロックオンしたときに出せる「乱舞」が、「ロックオン中」だけじゃなくて「ロックオン後ボタンを離してルーキス攻撃中」でも出せることに気付いたのもラスボス戦でした。これがわかると「ロックオン攻撃しつつ、敵弾斬ってEXゲージ溜めて、ロックオン攻撃が終わる前にすかさずEXアタック」という流れが作れるんですな。
  • そんなわけで、「ショットボタンを長押ししながらブレード連打」みたいな操作が重要になってくるのですが、これ、パッドカスタマイズ時に参考として表示されるような配置(ワイド、ブレード、フロントが3つ並ぶ)でやるのはちょっと厳しくないでしょうか? 個人的にはXbox 360コントローラーでブレードをLボタンにして、ブレード左手、ショット右手と分けたらかなりスムーズに操作できるようになりました。お勧め。
  • そんな感じで色々わかってきた後でプレイするEASYは格別の爽快感でした。EASYは斬れる弾が増えるんですなー。EXアタック出しまくり。
  • よく話題になる「5面の回転」ですが、NORMALでの初回プレイ時はとにかくがむしゃらで全く記憶にないうちに越えてました。2周目、EASYでプレイした時の方がゲームオーバーになりまくったり。
  • なので、「5面の回転」って最初は腕振ってパンチしてきたりする方を指してるのかと思いました。あれはがむしゃらにブレード振ってたら実績が解放されたので、「あ、これで防げるのか」とわかったのが面白かったです。実績のこういう使い方(解法の示唆)はいいですね。

 おわりに

クールで凛々しくて生体コンピュータで超越的存在になりかけてるけど、本当は普通の女の子なフィオが本当に可愛いです。

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